Museum of Niigata Univ. Phys. & Eng.

旧制長岡高等工業の機械要素部品関係の資料

機械は「限定された相対運動」をする部品から成り立ちます。運動を伝達する各部品の組み合わせを「機構」と呼びます。さまざまな機能を実現するためには,それに合った運動を創り出す必要があり,古くから数え切れないほどの「機構」が考案されてきました。それらは,天才のひらめきであったり,エンジニアの血と汗と涙の結晶であったり,子供の思いつきであったりしたことでしょう。長い長い人類の営みの中で培われ,18世紀後半の産業革命を契機とした機械文明社会の中で大きく花開きました。我々が日常目にするものは,それらのうちのほんの一部に過ぎません。収蔵品は,機械工学を学ぶ学生が「機構学」を理解するための一助として準備されたものですが,動きを見ているだけでも楽しくなったり,その工夫に感心したりするものが沢山あります。是非,手にとって動かしてみてください。

No. 実験器具(拡大) 器具名   器具の説明
(a) 早戻り機構 すべり子の往復運動において,作業中はゆっくりと運動し,素早い運動でもとに戻ります。
(b) 食い違い歯車 双曲線体の表面を刻み面とする歯車で両軸は平行でもなく,又交切もしない。この場合双曲線体の相接する部分は直線する。
(c) 逆転防止装置 ラチェットと歯によって逆転できないように回転方向を制限する。
(d) ワットガバナー 縦軸が回転すれば,二つの球は,遠心力によって跳び上がりこれと連結されている滑環を持ち上げる有様を示す。
(e) チェーン駆動装置 金属製のチェーン(chain)用い,伝動するもので,滑りを生じることなく,回転比を確実に保つことができる。
(f) 平行リンク 平行二軸間の円板に数個のLinkを等距離に取付け,両軸に回転運動を伝達するもので,回転に際して死点がなく速比一定。
(g) 太陽系儀(歯車機構部分) 太陽を巡る地球の公転運動および月軌道の変化を表すために工夫された、転位歯車を巧妙に利用した歯車機構となっている。
(h) 円筒カム 円筒外面を利用した立体カム機構で,円筒が回転すること でフォロワ−は等速直線運動をする。
(i) 枠カム機構 従動節の作用面が平面(平面フォロワ−)であり,さらに枠の中にカムが閉じ込められている。
(j) ハートカム(等速度カム) カムがハートの形をしているが,これによりポイントフォロワ−は等速運動となる。
(k) ホワイト式直線運動 大歯車にそのピッチ円の二分の一に等しい小歯車を内接噛合せれば,該歯車の一点は,大歯車の中心を通る真正の直線を画くという原理を応用したものである。
(l) 直線運動機構 リンクの回転によって直線的な運動を創り出すように工夫された機構。真正あるいは近似直線運動を実現するためにさまざまな方式が考案されている。
(m) かさ歯車 直交軸に回転運動を伝達する場合に用いる最も一般的な機構である。
(n) ウォーム歯車 二軸間の角が直角でウォーム(Worm)とウォームホイール(WormWheel)から成立っている。ウォームを回してホイールを回す場合,減速される。
(o) 遊星歯車機構 太陽歯車を中心として、自転と公転を行う遊星歯車、それらを結びつける腕から構成された歯車列。組み合わせによってさまざまな回転運動の伝達が可能になる。
(p) 差動歯車装置 遊星歯車装置の外側に内歯車を食い合わせた差動歯車機構である。
(q) ネジ歯車 2軸が平行でもなく、交わりもしないときに回転を伝えるための特殊な歯車。一つだけ見ると「はすば歯車」のように見える。一方の歯数を少なくし直径を小さくするとネジのようになるが、これがウォーム。車のデフに使われている「ハイポイドギヤ」もこれらの仲間。
(r) オルダム継手 2軸が平行で中心がずれているときに回転を伝えるための機構。回り対偶とすべり対偶がそれぞれ2個使われた4節の連鎖からなる。
(s) ピストン機構 4サイクルエンジンのピストン及び弁の構造を示したものである。
(t) ラチェット レバーの支点の両側に送り爪を取付け,レバーの左右の動揺に対し,ラチェットを連続的に送り得る様にしたもの。
(u) ホブソン式アンギュラー継手 直角せる四本の丸棒の両脚が直角に交わる両軸端に穿たれている孔内を滑り,回転運動を伝達する。
(v) 間欠運動機構 回転-停止-回転や、上昇-停止-下降など、一時停止を含む運動を実現するための機構。ゼネバ歯車という特殊な形状の歯車が用いられている。
(w) 傾斜カム機構 駆動節である平面斜面板の等速回転運動に対する従動節の運動は単弦運動となる。

(I.Nitta, M. Ohya & Photo by M.Iwasaki)